初恋の人に手紙を出したのは
桜の木の下のポストからだった
どんな手紙だったかは思い出せない
雨が降っていた
傘をさして少し遠いそのポストまでまわり道をした
初めて恋人に電話をかけたのは
桜の木の下の電話ボックスだった
何を話したのかは忘れてしまった
夜の公園はいつもと違って見えた
街灯の下で白い花が揺れていた
今日あなたにメールを送った
悩んだ末のあたりさわりのないメール
桜の木を見上げながら送信ボタンを押した
夕闇せまる中
満開の桜がうす紅色にざわめいていた
この空をこの花を
あなたの胸に映し出せたらと思った
(初出:2008年4月3日【みふみのトーキョー彩・時・記】
この時期になると思い出す自作の詩。
比較的反応も大きかったように記憶しています。
誰にとってもやはり、桜は特別な花なのでしょうか)